2017.07.17
今さら聞けない CAPEレシオ

図1:ロバート・シラー教授のサイトからダウロードしたチャート
割安割高を調べるのにPER(株価収益率:Price Earnings Ratio)がよく使われます。
PERは、時価総額を純利益で割って求めます。でも、この「純利益」ってのが曲者です。
たまたま自然災害で被害を受けて、大きな特別損失を被った場合には「純利益」は大きく下がります。
逆に、昔から保有している不動産を売却したらたまたま簿価よりも高く売れて、大きな特別利益を得た場合には「純利益」は大きく上がります。
特別損益がなくても、たまたま業績が悪くて純利益が少なかったり、たまたま大ヒットを当てていつもよりも業績が良いこともあります。純利益が小さければPERは大きくなって、純利益が大きければPERは小さくなります。
たまたま自然災害で大きな損失を被ってPERが高くなっても、直ちに割高だとは言えません。
つまり、純利益を基準に計算しているPERでは、大きなブレが生じる可能性があるのです。
PERではブレが大きいために、このブレを補正するいろいろな方策がとられることがあります。
例えば青山学院大学大学院 榊原 正幸教授の「過去5年間の最高純利益」を使う最高値PERなどです。
5年と言わずに10年間で、景気循環も調整して株価収益率の移動平均を求めようというのが、CAPEレシオ (Cyclically Adjusted Price-to-Earnings Ratio) です。
こちらもエール大学のロバート・シラー教授とジョン・キャンベル氏が定義しています。シラーPERとも呼ばれています。
図1はS&P500の1871年からのCAPEレシオです。ありがたいことに、エール大学のサイトからダウンロードできます。
図1では、青い線がS&P500のCAPEレシオで、赤い線が長期金利です。
CAPEレシオを見ると、2002年以来の高値となっています。
--みょ 高くなっているみょ
うん。CAPEレシオが高くなるというのは割高だってことです。S&P500は15年ぶりの割高水準にあると言えます。
ところで、7月14日時点のPERは予想値基準で18.8倍です。つまり、PERでは割高とはいえませんが、CAPEレシオでは割高だということになります。
PERってのはどうも信用できません。「たまたま」ってのが入り込む余地が大きいのです。
とは言っても、利益と株価の関係は気になります。
そんな時にはPER以外の指標もあるということかと思います。
