2017.06.21
ビットコインの適正価格って?
図1:マシンルームイメージ
ビットコインって実体がありません。ですから、需給関係だけで価格が決まっているように思ってしまいます。
例えば「株式」なら、利益の何倍まで買われているかを示すPERや、純資産の何倍まで買われているかを示すPBRで、適正価格が想定できて、割高なのか割安なのか判断できます。
為替なら、同じ水準の生活をするための費用を比べるという購買力平価や、金利差、国際収支などでやっぱり適正価格を想定することができます。
金や原油などのコモディティは、採掘して取引できる状態にするまでのコストによって適正価格が想定できます。例えば原油価格が上昇すればアメリカでシェールガス採掘リグをどんどん稼働させてどんどん採掘します。原油価格が下がってコスト割れするようになると新たにリグを稼働させようとはしません。
ビットコインでも、コモディティと同じ考え方ができます。ビットコインは、10分ごとに取引(トランザクション)を一つにまとめたブロックチェーンを更新する作業が発生します。
この作業を「最初に」完了した人に新たなビットコインが与えられます(採掘:マイニング)。頑張った人にはご褒美が与えられるのです。
この採掘も、最初のころは使っていない古いパソコンなどで片手間に行っていたようですが、何しろ急成長しているビットコインです。
だんだん高速なコンピュータが使われるようになって、そのうち汎用のコンピュータではらちが明かなくなって、専用のASIC(特定用途向け集積回路:application specific integrated circuit)が開発されてきました。ASICはマイニング作業が得意ですが、CPUと違って、マイニング作業しかできません。専用のチップなのです。
今では、ビットコインマイニング専用のビルを建てて、中では無数のASICを並列で処理させています。もちろん冷却も専用の水冷システムを導入してばっちりです。耐震や停電対策もきっとばっちりです。電気代も途方もない額です。
もはや個人が貯金でどうにかなるレベルを超えています。
ビットコインのマイニング報酬は210,000ブロックごとに半減することが決められています。現在は、2016年7月9日に半減された12.5BTCとなります。
10分ごとに12.5BTCの報酬しか得られません。世界で。
つまり、すべての採掘を成功させたとしても、10分で12.5BTCしか得られません。つまり、専用のビルを建てて、電気を湯水のように使いまくってライバルすべてに勝っても時給は75BTCなのです。
そして、恐ろしいことに、コンピュータの世界はどんどん進歩します。次のASICは今よりも早くて小型で省電力で発熱が少なくなっててなもんです。
投資金額を回収して利益が出るためにはビットコイン価格が上昇しないと困るのです。
もしも投資金額がこのままうなぎのぼりで、ビットコイン価格がそれに見合うだけ上昇しなかったら、少なくとも更なる設備投資や新規参入は危険です。
そうなると、今トップレベルの採掘者(マイナー)がランニングコストだけでトップレベルを維持できることになります。何しろ全体で時給75BTCはしばらく変わらないのです。
これが原油だったら、シェールガスのリグ稼働数は減少して全体の生産量が減少します。原油の消費は続きますので需給バランスが変化して価格の上昇につながります。
でも、ビットコインは別です。10分ごとに12.5BTCは必ず増加するのです。更なる設備投資や新規参入がなければ、ランニングコストだけでマイナー全員で時給75BTCを分け合うことになります。
もちろんランニングコストもばかにはなりませんが、新たなマイニング専用ビルを建てて中にこれでもかってほどASICを詰め込むことを考えたら安いものです。
ビットコイン価格がどんどん上昇したら、設備投資してもマイニングしたほうがお得なのかもしれません。
でも、上昇が止まったら、どんどん高額になる新規設備投資よりも、ビットコイン取引所で買ったほうが安いってことになりかねません。
どんどん下がると、ランニングコストも十分にかけられないかもしれません。もしも、現有設備の電気代なのどのランニングコストがマイニング報酬に合わなくなってきたら、どうなるのか考えるだけで恐ろしくなります。
何しろ、ブロックチェーンの計算はどんどん複雑になります。そして、10分ごとに複数のマイナーが更新をかけないと成り立たない仕組みなのです。
個人的には、今はちょっと過熱気味かと思っています。